本の紹介 シンギュラリティは近い[エッセンス版]

社内の興味が薄れないうちにもう一冊

今日のコンピュータサイエンスの世界で、もっとも未来が見通せている人を上げるとしたらレイ・カーツワイル以外には考えられない。

カーツワイルは、人工知能の権威で、近年はGoogleで人工知能チームを率いている人。

技術に基づく未来予測をする「フューチャリスト」として有名だけど、その考えは基本的には楽観主義。

技術的特異点<シンギュラリティ>の提唱者で、その到来を2045年を予想した。

技術的特異点とは、それまでの経験から予測できる技術的進化のスピードが、ある時点を超えると予測不可能なほど加速し、その先に起こることが予測不可能になるときの「ある時点」のこと。

人間と同等の知性を持つコンピューターがひとたび作られると、疲れも睡眠も不要なそのコンピューターは、自分よりも少し高度な知性を持ったコンピューターを人類よりもはやい速度で作成可能になる。

そして少し高度な知性を持ったコンピュータが、さらに高度な知性を作る。これらが加速度的に繰り返されることで人類を置いてけぼりにした未来が訪れるとしたらイメージできるだろうか?

 

こういった例えだと、「コンピュータによる人類の支配」という発想になりがちなんだけど、技術的特異点は、あくまで現在の感覚での未来予測が不可能になる時点での話なので、コンピュータによる支配とはちょっと違う。(結果的に同じだろうという「考えの人」もいる)

2007年にレイ・カーツワイルが書いた「ポスト・ヒューマン誕生」では、コンピュータのよる認知や知性の向上から、人類を超越した人類とは別の存在である<ポストヒューマン>について語られている。

今回紹介する「シンギュラリティは近い」は、このポストヒューマンから抜粋・再編集されたエッセンス版。

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元々が700ページ近い本だったのを1/3くらいにしてくれている。

エッセンス版とは言っても、本書を読むと「人類を超越した人類とは別な存在」ってのが、単純なコンピュータではないと理解できるかと思う。

現在のテクノロジーの正確な進歩の速度にふれつつ、人間の脳とコンピュータの関係を解き明かしながらカーツワイルの考える未来予想に触れていただきたい。

近い将来、脳の記憶や人格を電子的にコピーできたとして、「そのコピーはいったい誰なのか?」という論議が社会問題になる日は、そう遠くないんじゃないかな