TEDといえば世界一有名なプレゼンテーションの場。
そのプレゼンスキルの解説本は数多く出版されているけど、本書はTED運営陣が書いた公式本。
「人にものを伝える」ことへの強いこだわりがTED本質なのだとしたら、この本が面白くないはずがない。
この本は、ただの「プレゼンのテクニック本」ではなく「他人に何かを伝えるために大切なこと」を多く語っている。
本書の中で繰り返し語られるのは、形だけのプレゼンテクニックなんてどうでもよくて、あなたらしく人に考えを伝えられる一番いい方法を見つける努力をするべきだということ。
プレゼン内容を暗記するのがいいのか?
手元の原稿を読むスタイルではダメなのか?
についても最終的には、「あなたが人に伝えるために一番適した方法を選択してよい」としている。
これは楽な方法を選べということではない。
あなたにとって努力して暗記したほうが相手に伝わりやすいプレゼンができるのであれば、何か月も努力して、何度も練習して暗記するべきであるとしている。
とにかく全体を通して、「伝えるための努力」に一部の妥協もしないTEDの理念が感じられる。
TEDのプレゼンスタイルをマネすることが目的であってはならない。
誰かに伝えるために最大限の注意と努力を払った結果の集大成が、なんらかのプレゼンテーションテクニックとして切り抜かれてるに過ぎないと感じる。
1つ1つは、テクニックとして利用しても使える。
でも、それだけじゃ勿体ないと感じさせてくれる。
心の底から「伝えたい何か」が無ければ、全てのテクニックは無駄に終わる。
聴く人は、「来る途中で何を話そうか考えた」程度のことにはすぐ気が付く。
伝えるほどの価値がないものに聴く人は時間を割かない。
「伝えたいこと」があれば、本書は凄く役に立つ。
TEDが大切だと考える「伝えるための努力」が詰まっている。
そのまま使ってもいいし、自分に合わせてアレンジしてもいい(そのほうが伝えることにつながるなら)
余談だけど、本書の中で多数のTEDトークが例で出てくる。
トークの冒頭部分だけだったり、どのようなストーリー構成だったかでプレゼンの内容に触れたりするんだけど、自分が見たことのないプレゼンだと、そっちに興味を持っていかれて本の内容が頭に入らなかったので困った。
例えば
なぜ私たちは笑うのか
このプレゼンを聴いた後、もう我々はそれまでと同じように笑うという現象を考えられなくなった。全く違う見方を聴いている人に与えることが出来る。
みたいなことがさらっと書かれると、そもそもプレゼンの内容が気になって仕方がない。
巻末には、本書の中で紹介されたTEDトークが一覧になっていて、webから探せるようになっているので、ご安心を。